外壁塗装・屋根塗装の豆知識ブログ | マルキペイント

2020.11.10

初めての大規模修繕!工事タイミングや費用、実施のガイドライン

マンション 外壁塗装1

大規模修繕工事をご存じでしょうか?
大規模修繕工事とは、定期的に行うマンションの全面工事のことです。マンションの管理をするうえで欠かせない工事ですが、どのくらいの頻度で行ったらいいのか、工事費用はいくらかかるのかはあまり知られていません。

この記事では、マンションの大規模修繕工事をする時期の目安や費用の相場、実行する手順などを具体的に解説していきます。この記事を読むことで、大規模修繕工事の不安を解消していきましょう。

大規模修繕工事とは

大規模修繕 工事

大規模修繕工事とは、劣化したマンションの主要構造部を計画立てて修繕することです。なお、定義に沿って行われていない場合は大規模修繕工事とは言えないと考えられます。
国土交通省と建築基準法による大規模修繕工事の定義としては、マンションの主要構造部である壁や柱、床、はり、屋根または階段のうち1種類以上の箇所を2分の1超にわたり修繕することとされています。

マンションを運営するうえで欠かせない工事ですが、なぜ必要なのでしょうか? どのような法律で工事の方法が定められているのかも一緒に解説していきます。
▼大規模修繕工事の定義を詳しく知りたい場合は「大規模修繕の定義とは?改修との違いや工事の内訳などをわかりやすく解説!」の記事も確認

大規模修繕工事の必要性

大規模修繕 工事2

大規模修繕工事は、安全で安心できる居住環境を確保して、マンションの資産価値を維持するために必要です。工事を行わなかった場合、マンションの外壁にあるタイルや塗装には剥がれや汚れが発生して、金属部は腐食していくでしょう。さらに放置すれば、屋根や外壁の隙間に雨水が浸入して内部が劣化してしまい、雨漏りする恐れもあります。

劣化が進行したマンションでは階段や通路は崩れる危険があり、人が快適に過ごすことはできないと考えられます。人が住みたがらないほど劣化したマンションは、資産としての価値も低くなってしまうでしょう。
また、本来は塗装だけで済むはずの工事なのに、放置しすぎて破損が多数あるため、大規模修繕工事の相場の2倍以上の修繕費用がかかる恐れもあります。逆に、定期的に大規模修繕工事を行えば、1回の修繕にかかる費用を抑えることが可能です。

大規模修繕工事に影響を与える法律

大規模修繕 工事3

「建物の区分所有等に関する法律」の第17条により、大規模修繕工事(共用部の変更)には「区分所有者及び議決権数のうち、4分の3以上の集会による決議が必要(ただし規約により過半数まで減らしてもよい)」とされています。また、大規模修繕工事により専有スペースの利用に特別な影響を及ぼす場合は、「専有部分の所有者の承諾が必要」とされています。

つまり、大規模修繕工事をする場合は、マンション所有者を無視して行うことはできないと法律で定められているのです。
区分所有者の4分の3または過半数が工事を認めない事態が発生すると、大規模修繕工事は実施できないでしょう。「マンションでの生活環境が良くなるメリットしかないから、物件所有者は反対しないだろう」と安易に考えず、トラブルを招かないよう工事の際には丁寧な説明が必要です。

マンションの大規模修繕工事の際に建築確認申請は必要?

大規模修繕 工事4

マンションの大規模修繕工事では、工事内容によって「建築確認申請」が必要かどうかが決まります。
建築確認申請とは、建物を建築や改修などをする前に、担当機関に書類を提出して予定している工事計画が建築基準法や消防法などに適合しているか確認することです。
建築基準法にて規定されている、建築主が行わなければならない申請行為の1つです。
担当機関とは、自治体の建築主事(建築関係の確認を担当する役職)や指定確認検査機関を指します。

建築基準法では、マンションの大規模修繕工事の際に建築確認申請が必要となります。
しかし、大規模修繕工事の内容が建築確認申請を必要とする工事ではない場合は、行わなくていいのです。
建築確認申請を必要とする工事にはどんな内容があるか、以下で解説しましょう。

建築確認申請が必要な工事とは

大規模修繕 工事5

建築確認申請は、規定された建物に対して以下のような工事を行った場合に必要です。
・新築
・増築やリフォーム
・改築
・大規模な修繕や模様替え

建築確認申請が必要な工事のうち、マンションの大規模修繕工事に関係するのは「大規模な修繕」です。
建築基準法では、大規模修繕を建物の主要構造のうち1種以上の過半数を修繕することと定義しています。
建物の主要構造とは、以下の部分を指します。
・壁
・柱
・床
・梁
・屋根
・階段
主要構造のうち、1種以上の箇所の過半数を修繕する場合、建築確認申請が必要です。
マンションの大規模修繕工事では、一般的な外壁塗装や屋根の防水工事の場合、建物の表面の修繕と見なされるため建築確認申請は不要です。
ただし、壁や屋根自体を改修したり修繕したりする場合は、建築確認申請が必要となります。
また、マンションの大規模修繕工事でエレベーターや立体駐車場の増設を行った場合も、建築確認申請が必要です。

計画しているマンションの大規模修繕工事で建築確認申請が必要かどうかの判断が難しい場合は、設計事務所や建築事務所、または自治体の担当課に相談しましょう。

建築確認申請が必要な建物とは

大規模修繕 工事6

建築確認申請を行わなければならない建物は、建築基準法第6条第1項にて4つの区分に分けられています。
4つの区分に当てはまる建物を新築したり修繕したりする場合には、建築確認申請が必要です。
4つの区分は、1~4号に分けられています。

1号は、事業に提供する部分の床面積の合計が100平米を超える特殊建築物です。
映画館や病院、ホテルなどが当てはまります。
2号は、3階以上の木造の建築物で延面積が500平米より広く、高さが13mもしくは軒の高さが9mを超す建物です。
3号は、2階以上あり、延面積が200平米を超える木造の建築物ではない建物のことです。
4号は、1~3号に当てはまらない建築物となります。

1~3号の建築物の場合、新築や増築、改築 、大規模修繕や模様替え、移転をする場合に建築確認申請が必要です。
4号の建築物の場合、新築や増築、改築、移転の際に建築確認申請が必要です。

「修繕」と「改修」と「模様替え」の違い

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建築確認申請を行う工事を見極めるために、修繕と改修、模様替えの違いについて確認しておきましょう。
修繕とは、経年劣化によって劣化した建物の一部を修理したり取り換えたりする工事です。
劣化や破損した箇所を、建築当初の状態にまでできるだけ回復させることが目的です。

改修とは、建物の居住性を上げるために、機能や設備をグレードアップさせる工事を指します。
リノベーションともいい、マンションを改修する場合、居住率の向上にも期待できます。
模様替えとは、建物の構造や機能性を変えずに建築物をつくり変えることです。

マンションの大規模修繕工事をするメリットとデメリット

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マンションの大規模修繕工事をするメリットは知っていても、デメリットを意識するケースは少ないのではないでしょうか。デメリットを把握しておかなければ、工事の際の対応を誤って思わぬトラブルを引き起こすこともあります。
以下では、大規模修繕工事を行うメリットとデメリットを解説していきます。

メリット

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大規模修繕工事の主なメリットは以下の3つです。
・建物の安全性が確保できる
・居住性が向上する
・資産価値を維持・向上する

タイルや床のモルタルなどが欠けているといった危険箇所を修繕するほか、外壁のひび割れをふさいで雨漏りを防ぎます。
また、大規模修繕工事をすることで、建物の強度を高めて耐震性の向上を図るといった安全性の確保も期待できます。
さらに、大規模修繕工事の際に設備の交換やバリアフリー化などをすれば、マンションの居住性が向上して入居者が増えることにもつながるでしょう。
老朽化した部分をデザインから刷新したり、最新設備を設置したりすれば、建物の耐久性の向上だけではなく資産価値の向上にも役立ちます。

デメリット

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大規模修繕工事における主なデメリットは3つあります。
・ 費用がかかる
・ 入居者への告知が必要になる
・業者への依頼に手間がかかる

大規模修繕工事では、外壁塗装や設備交換などで高額な費用がかかります。どの程度の費用がかかるのかは、のちほど詳しく解説します。
また、修繕工事をする際は入居者へ告知する必要があります。入居者向けの説明会を開かなければならないため、スケジュールの調整が必要です。告知をしなかったり告知が遅かったりすると入居者からクレームが入って工事が遅くなり、費用がかさむ恐れがあるのです。大規模修繕工事が決まったら、入居者に対しても迅速な対応が求められます。
入居者への告知だけではなく、業者への工事の依頼にも手間がかかります。一般的に大規模修繕工事には1年以上の期間が必要で、さまざまな修繕工事が行われるため、複数の業者と何度も打ち合わせをする必要が出てくるでしょう。

大規模修繕工事をするタイミング

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国土交通省では、大規模修繕工事はおよそ12年に一度行うことを想定しています。
しかし、近年では1回目の工事は12年を超えて行う場合が多いようで、国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、実際の大規模修繕工事の1回目は平均16.3年で行われているとの調査結果があります。また、1回目の大規模修繕工事を築21年以上になってから行っているマンションも1割程度あるとされています。
1回目の大規模修繕工事の時期の理想は築12年程度ですが、ほかのマンションのケースから考えると、おおよそ16年を目安に実施をするとよいでしょう。
▼工事のタイミングを詳しく知りたい場合は「マンションの大規模修繕を行う時期はいつがベスト?工事に必要な準備期間とは」の記事も確認

大規模修繕工事に向いている季節

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大規模修繕工事に向いている季節は、春や秋です。
1日のうちに気温の大幅な変化もなく、安定しているため工事が行いやすいです。
また、工事を中断せざるを得ない台風や豪雪の心配もありません。
ただし、大規模修繕工事を行いやすい季節なので、施工業者は繁忙期となります。
業者が繁忙期の場合、工事費用が高くなってしまう場合があります。
また、工事の依頼ができないこともあるため、人気の季節にマンションの大規模修繕工事を行う際は、早めに業者選びを行うようにしましょう。

大規模修繕工事にかかる期間

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大規模修繕工事にかかる期間は、一般的に計画から着工まで1年~1年半程度が目安です。また、着工から完了までは2ヶ月以上かかるといわれています。
工事期間はマンション規模によって異なります。50戸以下の小規模マンションでは2~3ヶ月、50~100戸程度の中規模マンションであれば3~6ヶ月程度が目安となるでしょう。100戸を超える大規模マンションなら6ヶ月~1年程度かかる場合もあります。
また、公園やプールが付いたタワーマンションであれば、1~2年程度かかることもあるでしょう。どの程度の期間がかかるかを決めるためには、業者と工事内容をよく相談しなければなりません。

大規模修繕工事を行う主な修繕箇所と費用

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大規模修繕工事を行う主な箇所には以下があります。
・ 外壁
・ 床や屋根の防水
・ 鉄部塗装
・ 共用部
・ 建具金物
・ 給排水設備
・ ガス設備
・ 空調や換気設備
・ 電灯設備
・ 情報通信設備
・ 消防用設備
・ エレベーター
・ 駐車場設備
・ 外構
なかでも、外壁工事と床・屋根防水、鉄部塗装には特に費用がかかります。

国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、1回目の大規模修繕工事の総額に占める費用の割合は、22.9%が仮設工事、16.9%が外壁塗装、14.9%が床防水、11.8%が屋根防水、11.8%が外壁タイル、4.4%が鉄部等塗装とされています。上記の費用だけで全体の82.7%を占めるのです。

大規模修繕工事に必要な工事総額は、マンション規模によって異なります。同調査では、1回目の大規模修繕工事における修繕費用で最も多いのが3,000~3,500万円の範囲です。次いで3,500~4,000万円となります。初めて大規模修繕工事をするマンションのうち、31%が2,000~4,000万円の金額に収まっているとされています。平均金額は、1戸当たりだと100万円、1平米当たりなら約13,096円です。
近年では、マンションの大規模修繕費が予想以上に高騰して、費用の積立が難しくなっているともいわれています。マンションの築年数が経過するほど、老朽化が進行して修繕費が増える恐れがあります。
しかし、見込みが甘い修繕計画により修繕積立金を十分に確保できないことが、修繕費用が不足する原因のひとつだと考えられているのです。
▼大規模修繕に必要な費用を作る方法を知りたい場合は「大規模修繕にかかる費用はどれくらい?価格を安く抑えるコツも詳しく紹介!」の記事も確認

大規模修繕工事の費用が足りない場合の対処法

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大規模修繕工事の費用が足りない場合は、以下の3つから対策案を練りましょう。
・居住者から一時金を徴収する
・居住者の修繕積立金を値上げする
・金融機関から借り入れる

一時金の徴収と修繕積立金の値上げは、マンション居住者からの同意が必要となります。
マンション居住者にとっては金銭的負担が増えるため、なかなか同意が得られない場合もあります。
居住者への説明会を開き、大規模修繕工事の内容や必要性などを丁寧に説明して同意を得られるようにしましょう。

また、金融機関から不足している修繕費を借り入れる方法は、居住者への負担がないのでスムーズに実施できる対処となります。
しかし、借入金の返済には居住者の修繕積立金を充てるため、将来的に積立金の値上げが必要です。
マンション居住者には、修繕積立金が値上げになる理由や大規模修繕工事の内容をきちんと説明するようにしましょう。

大規模修繕工事を計画から実行するまでの手順

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実際に大規模修繕工事を行おうと考えても、何から手を付ければよいのかわからないかもしれません。
大規模修繕工事は、主に以下の流れで行います。
1. 管理組合の発意
2. 専門委員会の設置と検討
3. 専門家の選定と総会決議
4. 調査や診断を調査会社に依頼
5. 修繕設計を設計業者に依頼
6. 工事の見積もり
7. 工事業者の決定
8. 資金計画を立てる
9. 総会決議
10. 工事業者との契約
11. 大規模修繕工事の施工
大規模修繕工事は、マンション建築時の長期修繕計画に沿って積み立てていた資金を利用して行います。
長期修繕計画とは、マンションが経年劣化することで、将来的にどういった修繕が必要になるかを見通して計画を作成することです。費用の算出や、毎月の修繕積立金を決める作業も含まれます。基本的に、20年や30年といった長期間で予定を立てることが必要となるでしょう。

長期修繕計画は、5年に一度は建物の劣化診断を実施して、確認した劣化状況に応じて内容の見直しが必要だと国土交通省が定めています。見直しをすることで適切な工事内容を判断でき、工事費用を無駄にせず適切な時期に大規模修繕工事ができるようになります。

大規模修繕工事をする際は、以下の組織の特徴を把握しておくと、業者とスムーズに話が進めやすくなるでしょう。
・管理組合
・管理会社
・工事会社
・コンサルタント会社

管理組合とは、マンションを管理する組織です。マンション所有者(区分所有者)によって結成します。しかし、区分所有者の全員で運営するのは手間や時間がかかり大変なため、代表として結成する「理事会」がマンションの管理を主に行います。
管理会社とは、管理組合から委託されてマンションの管理を専門で行う会社です。一般人の集まりである管理組合だと、清掃や設備の点検などはできても、大規模修繕工事の計画作成や会計作業は困難となります。
大規模修繕工事に関しては、一般的にマンションの管理を専門で行う管理会社に委託します。
工事会社とは、管理組合から依頼を受けて大規模修繕の施工を行う会社です。
コンサルタント会社とは、マンションの調査や診断、修繕設計、施工監理(工事の品質管理)、業者選定の手伝いなどをする会社です。

以下では、大規模修繕工事を行うことが決定してから施工までの手順を紹介します。
これから大規模修繕工事を行いたいとお考えの方は、ぜひチェックしてみましょう。

管理組合の発意

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管理組合の代表である理事会が、長期修繕計画に基づいて大規模修繕工事の実施をしようと決めることです。
大規模修繕工事の準備を始める段階です。

専門委員会の設置と検討

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理事会とは別に、大規模修繕工事専門の委員会を設置します。理事会はマンションの通常運営だけで手一杯なため、大規模修繕工事の対応までできないことが多いです。また、大規模修繕工事は準備段階から1年以上かかりますが、その間に担当者が変わってしまうと計画に支障をきたす恐れがあります。このため、大規模修繕工事専門の委員会を設置して、安定的な工事ができるようにする必要があります。

専門家の選定と総会決議

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専門委員会の委員には、以下に当てはまる人材を取り入れることが公益財団法人マンション管理センターにより推奨されています。
・計画修繕工事を経験している
・建築士のように専門知識がある
・意欲がある
・年齢に多様性を持たせられる
・理事会と連携が取れる(理事会と兼任)
このほか、専門委員として参加はしないものの重要な人材として、理事会の「理事長」と「監事」がいます。
理事長は大規模修繕工事に関する意見を求めるために、監事は監査する人材として必要です。
また、専門委員の権限や任期などを盛り込んだ運用細則を、総会決議によって制定するケースが多いです。

調査や診断を調査会社に依頼

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マンションの外壁や共用部、設備といった各所を調査・診断して長期修繕計画の作成と修正を行う作業です。大規模修繕工事の明確な時期を決定するのもこの段階です。ここで調査した内容は、今後の長期修繕計画や大規模修繕工事の際の根拠資料となります。
調査会社の候補は3つあります。
・ 管理会社
・ コンサルタント会社(設計事務所)
・ 工事会社
調査を依頼する会社を決める前に、施工方式を考えなくてはいけません。なぜなら、施工方式によって依頼する会社が自動的に決まるケースがあるからです。

施工方式は主に以下の2つがあります。
・ 設計監理方式
・ 責任施工方式
設計監理方式とは、設計と品質管理をコンサルタントや設計事務所に依頼して、施工は別業者に頼む方式です。
設計と施工がそれぞれ別業者のため、品質の監視体制が強化されるメリットがありますが、別々に依頼するため手間が増えてしまいます。
責任施工方式とは、設計から施工まで同一業者に依頼する方式です。管理会社や信頼できる工事会社に、設計から施工まですべて任せるので手間が少ないメリットがあります。
ただし、監視体制が甘いため、非効率な工事や価格の水増しといったリスクが高まります。

設計監理方式の場合、調査や診断を行う会社の調査能力が高いかどうかが工事の成功にかかっています。過去の実績を確認して、信頼できる業者を探しましょう。
責任施工方式の場合、管理会社や信頼できる工事会社に調査や診断も一任することになるでしょう。

修繕設計を設計業者に依頼

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調査・診断によって、大規模修繕工事をいつ行うのかを計画し、どのくらいの費用がかかるのかを計算します。
設計監理方式の場合、修繕設計をする業者は実績が豊富な会社を選びましょう。
責任施工方式であれば、委託した管理会社や工事会社が修繕設計を立てることになります。
この段階で、工事する場所やスケジュール、工事仕様などを決定します。

工事の見積もり

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大規模修繕工事を施工する業者を選定するための準備です。
設計業者が決めた内容で工事をしてくれる施工会社を探すために、各社に見積もりを出してもらいます。
工事業者を決める方法には以下の3つがあります。
・ 見積もり合わせ方式
・ 入札方式
・ 特命随意契約方式
見積もり合わせ方式とは、施工会社の経営状況や規模などによって事前に数社を選んでおき、見積もりを提出させたうえで面談を行って選定する方法です。
入札方式とは、施工会社の経営状況や規模などによる最低基準を決めて公募したり数社を選定したりして、想定価格内で最低金額を提示してきた業者を採用する方法です。
特命随意契約方式とは、付き合いがある、または修繕実績が豊富といった理由から信頼できる業者に対して見積もり提出と面談を行ってから契約する方法です。

工事業者の決定

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工事業者を決定する段階です。
数ある会社のなかから工事業者を選定するポイントとして、以下を確認することを公益財団法人マンション管理センターが推奨しています。
・ 建設業許可があるか
・ 見積書の項目や内容に具体性があるか
・ 施工保証は十分か
・ アフターサービスは十分か
・ 大規模修繕工事の実績は豊富か
・ 施工会社に財務的な問題はないか
・ 担当者の熱意や会社の評判は良いか

建設業許可は小規模な工事なら不要ですが、マンションの大規模修繕では欠かせません。
また、内訳明細書なのに見積書の項目が「〇〇一式」といった抽象的な内容ばかり記載されていたら、信頼性が低い業者だと考えられます。

さらに、施工保証にも注目しましょう。工事後に問題が見つかった際、どこまで無償で対応してくれるのかは確認しておきたいところです。同様に、工事後にメンテナンスといった面でどのようなサービスがあるかもチェックしておきましょう。
大規模修繕工事の実績がある会社かどうかも選定基準のひとつです。工事に不慣れな業者だと、施工はできても入居者への対応が悪くてトラブルを招く恐れがあります。

担当者の対応や会社の評判を選定基準のひとつにしてもよいでしょう。担当者が真剣に対応してくれる会社なら、職人にも教育が行き届いている可能性が高いと考えられます。知り合いが利用して評判が良かった施工会社があれば、利用を検討してみてもよいでしょう。

資金計画を立てる

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大規模修繕工事の費用は基本的に修繕積立金で対応しますが、積立金だけでは不足することもあります。そういった場合は、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」により無担保で資金を借り入れできる可能性があります。クリアしなければならない条件は多いですが、現在積み立てている修繕積立金だけでは工事費用が足りないという場合に検討してみてください。または、居住者からの一時金の徴収や毎月の積立金の値上げも検討しましょう。

総会決議

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大規模修繕工事を実施するためには、区分所有者および議決権数のうち、集会においてそれぞれの4分の3の決議が必要(ただし規約により過半数まで減らせる)です。この基準をクリアしなければ、いくら準備をしても工事は実施できません。
また、マンションの管理規約が古い場合は大規模修繕工事の総会決議に関する事情が異なる恐れがあるため、問題がないかを法律に詳しい専門家に確認することをおすすめします。

工事業者との契約

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施工前に、工事業者と契約を結びます。工事請負契約書のほか、工事費の内訳書、工程表などがあるためすべて確認が必要です。契約すると内容を覆すことは難しくなるため、細かい点までしっかりとチェックしましょう。

大規模修繕工事の施工

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大規模修繕工事の施工が始まります。
実施前には入居者に向けた説明会を実施しましょう。
工程や工期、工事をする場所、防犯や安全対策、緊急連絡先、お願いしたいことなどを伝えて入居者の不安を取り除きます。

大規模修繕工事の進め方を詳しく知りたい場合は「大規模修繕工事の進め方とは?流れや施工の際の注意点も紹介!」もご覧ください。

また、かかる工期については「マンションの大規模修繕にかかる期間はどれくらい?工事の準備から完了までの流れも解説」をチェックしてみてください。

大規模修繕工事をする際のポイント

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大規模修繕工事をする際のポイントは5つあります。
・大規模修繕工事の費用相場を知っておく
・管理会社に大規模修繕工事を依頼するのはリスクがある
・不適切なコンサルタントに注意する
・依頼する業者は見積もり合わせ方式で選ぶ
・業者に丸投げをしない
知らずに工事を始めてしまうと、失敗したり後悔したりする恐れがあるため、ぜひ以下の5つのポイントをチェックしてください。

大規模修繕工事の費用相場を知っておく

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大規模修繕工事の費用相場を知っておくことで、詐欺を未然に防いで無駄なお金を支払わなくて済みます。
マンションの大規模修繕工事にかかる費用相場は、1回目の工事では3,000~3,500万円となり、1戸あたり100万円が平均です。
大規模修繕工事を予定しているマンションの戸数から、工事にかかる平均額を算出しましょう。
業者選びの際、費用相場よりも工事価格がかなり高い業者は詐欺の可能性があります。
また、相場よりも大幅に値下げしている業者の場合も、手抜き工事をする悪徳業者の可能性があるため注意しておきましょう。
ただし、マンションの状態や工事の内容、施工業者によって工事価格は変わってきます。

管理会社に大規模修繕工事を依頼するのはリスクがある

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管理会社に設計から施工まですべて依頼すると、工事費用が高くなるリスクがあります。管理会社は下請け業者に設計や施工を依頼することが多いので、仲介料がかかってしまいます。
また、大規模修繕工事が得意ではない下請け会社に依頼されると、適切な手順で施工されず、建物の劣化が早まる危険性があります。

不適切なコンサルタントに注意する

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マンションの大規模修繕工事で注意しておきたいのは、不正をはたらく不適切なコンサルタントです。
不適切なコンサルタントは、マンションの管理組合に対して「利益相反行為」を行います。
利益相反行為とは、コンサルタントが管理組合の利益になることと反対の行為を行うことです。
コンサルタントによる利益相反行為は、国土交通省からも注意喚起が行われています。
不適切なコンサルタントを避けるためには、豊富な知識と実績を持っている会社を選びましょう。
丁寧な対応で、質問にも明確に答えてくれる会社は、信頼できるコンサルタントといえます。
また、管理会社や施工業者などと関係のない、中立な立場のコンサルタントを選ぶことも重要です。
施工業者は公募で募集して、利益相反行為が行えないようにするのもおすすめです。

依頼する業者は見積もり合わせ方式で選ぶ

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工事ごとに個別で施工業者を選ぶ場合、費用や工事内容を比較してより安価な業者を選べる「見積もり合わせ方式」を利用した方が修繕費を抑えられる場合があります。ただし、見積もり合わせ方式にする際は価格だけで選ばず、担当者の対応や保証内容なども検討しましょう。価格だけで施工業者を選ぶと、手抜き工事をされる危険があります。

業者に丸投げをしない

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大規模修繕工事をする場合、設計や施工などは業者に丸投げしないようにしましょう。
作業のすべてを業者に丸投げしてしまうと、手抜きをされたり意思疎通がうまくいかずに思わぬ出費があったりする危険があります。
業者を信頼するのは大事なことですが、そのうえで管理組合が積極的にチェックや相談をして、納得できる工事にすることが大切です。
▼大規模修繕工事で注意したいポイントを詳しく知りたい場合は「マンション大規模修繕で注意する9のポイント」の記事も確認

大規模修繕工事における人体への配慮と感染症対策

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大規模修繕工事の際に入居者が心配することとして、建築材の健康への影響や、作業者の感染症対策などがあると考えられます。
居住環境や健康に配慮をする場合、外壁塗装に使う塗料を人体への影響が少ない水性塗料にするといった対策があるでしょう。ただし、塗装の耐久性が低下したり、費用が高くなったりするデメリットも考えられるため、専門家や施工業者と相談しなければなりません。

また、新型コロナウイルスの影響により大規模修繕工事を延期するかどうかも検討しましょう。築12年程度のマンションであれば、目に見えて劣化や破損がある場合を除いて、2年程度の延期であれば大きな問題は起こりにくいと考えられます。
コロナ禍に大規模修繕工事を行う場合、入居者や作業者の感染症対策が必要です。どのような対策を行うのか、工事中に感染者が出た場合に工事を中断できるのかなどを工事業者に確認して、入居者が工事中に不安にならないように告知を徹底することが必要です。

まとめ

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大規模修繕工事とは、劣化したマンションの主要構造部を計画立てて修繕することです。1回目の工事を行う時期はおおよそ12年が理想ですが、実際には16年程度のマンションが多いでしょう。
大規模修繕工事にかかる費用は1平米当たり13,096円程度が目安です。

工事を依頼する際は、設計から施工までを管理会社といった1社にすべて任せてしまう「責任施工方式」と、設計・施工でそれぞれ業者を選定する「設計監理方式」があります。
責任施工方式の場合、管理会社に安易に依頼すると費用が高くなるリスクがあるため、手間はかかりますが工事内容ごとに業者を選ぶ「設計監理方式」も検討してみましょう。

大規模修繕工事を依頼する業者の選び方は「大規模修繕の工事業者はどう選べばいい?会社の選び方や注意点を徹底解説!」をご覧ください。