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2020.11.10

大規模修繕の定義とは?改修との違いや工事の内訳などをわかりやすく解説!


マンションは建築後、将来的に大規模修繕が必要となることはご存じですか? 大規模修繕と聞くと、なんとなくイメージはできても、その定義や工事内容までは詳しくわからないかもしれません。
しかし、マンションを運営するうえで、大規模修繕は切っても切れない関係にあります。今回は、大規模修繕の定義や工事の内訳などを詳しく解説していきます。

1.大規模修繕の定義とは

大規模修繕とは、経年劣化したマンションの主要構造部を計画的に修繕することです。また、定義に沿って行われていない修繕は、大規模修繕とは言えないので注意が必要です。
大規模修繕の定義は、国土交通省と建築基準法によって定められています。それぞれに定められている定義には、マンションの主要構造部である壁や柱、床、はり、屋根または階段のうち1種類以上の箇所を2分の1超にわたり修繕する工事と記載されています。

 

また、国土交通省が定めている修繕の定義とは、もとの建て材とほとんど同じ材料を使って原状回復するということです。なので、大規模修繕の定義である「マンションの主要構造部のうち1種類以上の箇所を2分の1超にわたり修繕する」のわかりやすい例としては、建物全体の外壁塗装を行ったり、10本あるはりのうち6本以上を修繕したりすることが挙げられます。

 

参考 法律上の手続きと補助・融資等の制度|国土交通省(PDF)
建築基準法における大規模修繕等とは|公益財団法人 自動車リサイクル促進センター(PDF)

1-1.大規模修繕を行う目的とは?

大規模修繕は、まずはマンションの価値を維持することを目的に行われます。マンションは経年劣化によって、破損したり不具合が生じたりします。経年劣化をそのまま放置していると、もちろんマンションの価値は下がってしまうでしょう。
そのため、大規模修繕を行い原状回復することで、マンションの価値を維持、または向上することができます。

 

さらに、マンションの美観を整えたり、バリアフリー化や設備の機能性アップなどの住民から求められているニーズを満たしたりすることも、大規模修繕を行う目的となります。
このように、定期的に大規模修繕を行うことで、マンションの価値を維持向上でき、入居者を安定して確保できるでしょう。

1-2 改修と修繕の違いとは?

修繕とは劣化部分を原状回復させるということでしたが、改修とは、建物の機能をグレードアップさせて、居住環境を改善する工事のことをいいます。
マンションは定期的に修繕することで、資産価値の維持・向上が期待できますが、そのままでは、将来的には機能性が低い建物と見なされるおそれがあります。機能性が低いマンションは、資産価値が下がりやすく、また、住民の確保も難しくなるでしょう。
そこで、住民がさらに安心かつ快適に過ごせるマンションとなるように改修を行うことで、長年にわたって資産価値を維持できるようになります。

2.大規模修繕に欠かせない長期修繕計画とは

長期修繕計画とは、マンションが経年劣化することで、将来どのような修繕が必要になるかという見通しを立て、費用を計算し、毎月の修繕積立金を決めるために作成することです。基本的に、20~30年後に向けて長期的な修繕計画を立てます。
計画書には、工事の時期や内容、必要になるであろう修繕費用などが記載されます。

 

長期修繕計画作成ガイドライン|国土交通省(PDF)

2-1 長期修繕計画を作成する目的とは?

長期修繕計画は、マンションの大規模修繕が滞りなく行われるようにするために作成されます。先ほど、大規模修繕はマンションの資産価値を維持・向上させて、住民が快適に住めるようにするために行われるとお伝えしました。
しかし、工事には膨大な費用がかかるため、住民から修繕積立金を徴収する必要があります。そこで、修繕積立金が住民の大きな負担にならず、継続して徴収可能となるよう考えなければなりません。
長期修繕計画は、将来必要となる修繕工事の計画を立てたり修繕費を算出したりして、修繕積立金が安定して徴収できるよう、また工事費用が不足しないよう作成されます。修繕工事の費用が不足すると、不具合や劣化箇所を修繕できず、マンションの資産価値が低下してしまうでしょう。資産価値の低下や、不便な住環境となることを避けることも、長期修繕計画を作成する目的と言えます。

2-2 長期修繕計画の見直し基準とは?

長期修繕計画は、5年をめどに見直して更新していく必要があると、国土交通省が定めています。
国土交通省が定めている長期修繕計画の見直し基準は、以下の4つです。
 建物及び設備の劣化の状況
 社会的環境及び生活様式の変化
 新たな材料、工法等の開発及びそれによる修繕周期、単価等の変動
 修繕積立金の運用益、借入金の金利、物価、消費税率等の変動

 

以上の4つの基準を確認しながら、長期修繕計画に不足している項目はないか、現在、管理組合がどのように補修維持を行っているかなどをチェックしていきます。また、修繕積立金が安定して確保できているかも確認しなければなりません。

3.大規模修繕の工事の内訳とは

国土交通省の調査によればマンション初回の大規模修繕工事の費用は、以下の順で多く必要とされています。
1. 外壁塗装・タイル 28.7%
2. 屋根・床防水 26.7%
3. 仮設工事 22.9%
次いで、鉄筋部分や排水・給水設備の修繕に費用が必要です。また、2回目の大規模修繕工事では給水設備、3回目は建具・金物等の割合が増加する傾向にあります。

 

マンション大規模修繕工事に関する実態調査|国土交通省(PDF)

4.大規模修繕における設計コンサルタントとは

マンションの大規模修繕は、素人ではどのように計画して実行すればいいかわからないため、設計コンサルタントに計画書の作成を依頼することが多いです。大規模修繕における設計コンサルタントとは、マンション管理をサポートする、縁の下の力持ちと言えるでしょう。

4-1 コンサルタントの役割とは?

コンサルタントの役割とは、マンションの現状を調査したり、建物の設計や工事監理に携わったりして修繕計画を作成することです。大規模修繕が不備なく行われるためには、コンサルタントの高い技術力が必要となります。

4-2コンサルタントの種類とは?

コンサルタントの種類には、以下の3つがあります。
 管理会社
 コンサルタント専門会社(設計事務所)
 一級建築士
それぞれの種類について、どのような特徴があるか解説していきましょう。

 

管理会社
マンションの管理会社のなかには、大規模修繕のコンサルタントも担っているところもあります。そうした管理会社には、工事を施工する部門や提携している業者があり、大規模修繕のコンサルタントを依頼した場合、工事は管理会社の別部門や提携している業者が施工することになるでしょう。

 

コンサルタント専門会社(設計事務所)
コンサルタント専門会社は、大規模修繕のコンサルタントに特化した会社です。大規模修繕のコンサルタントについて豊富な知識と経験を持つスタッフが常駐しており、一級建築士が在籍していることもあります。

 

一級建築士
一級建築士は、建物の設計や工事監理に詳しいため、大規模修繕のコンサルタントを依頼できます。しかし、一般的に一級建築士が得意とする分野は新築の設計です。
そのため、一級建築士に依頼する際は、大規模修繕のコンサルタントの経験や知識が豊富かを確認することをおすすめします。

 

4-3 コンサルタントとの間に多いトラブルとは?

大規模修繕でのコンサルタントとの間に多いトラブルには、利益相反行為があります。利益相反行為とは、当事者間において、一方が相手の不利益によって利益を得ることになる行為をいいます。
大規模修繕では、工事の施工会社を選ぶ際、特定の業者が受注できるようにコンサルタントが仕向けて、自社が利益を得るという利益相反行為が発生しやすいです。このような悪質なコンサルタントは、長期修繕計画も不備だらけというパターンが多いため、再度作成しなければならなくなります。
マンション管理組合は新たなコンサルタントに依頼する必要があるため、さらに費用がかかり、不利益を被ることになるでしょう。

 

利益相反行為|コトバンク

4-4 良質なコンサルタントを選ぶためのポイントとは?

大規模修繕を行う際、長期修繕計画の内容に不足はないか、費用は適切かなどの確認をするため、まずはコンサルタントに依頼することになります。しかし、悪質なコンサルタントも存在しているため、依頼する際には注意が必要です。

 

良質なコンサルタントを選ぶためには、以下の3つのポイントをチェックしてください。
 大規模修繕のコンサルタントの実績が豊富か
 特定の業者にばかり施工の依頼をしていないか
 見積もり額が安すぎないか
良質なコンサルタントの場合、顧客を安定して獲得しているため、実績が豊富です。これまでの実績を開示しているコンサルタントだと、さらに安心して依頼できるでしょう。

 

また、最近は悪質なコンサルタントによる利益相反行為が増えています。特定の業者にばかり工事の施工を依頼していたり、見積もり額があまりにも安かったりする場合には、裏で不正なマージンを受け取っている可能性があります。
コンサルタントに依頼する際には、工事を請け負う施工業者や見積もりについてもよく確認しておきましょう。

5.まとめ

大規模修繕は、マンションの資産価値の維持・向上が期待できる、大切な工事です。不備なく工事が行われるよう、長期修繕計画をもとに修繕積立金を確保しておくことも、健全なマンション運営には欠かせません。そして、適切な修繕工事が行われるよう、良質なコンサルタントに依頼して、しっかりとサポートを受けるようにしましょう。

大規模修繕で注意するべき9つのポイントをこちらで分かりやすく説明しています。ぜひご覧ください。
▼マンション大規模修繕で注意する9のポイント

 

参考:
参考 法律上の手続きと補助・融資等の制度|国土交通省(PDF) 
建築基準法における大規模修繕等とは|公益財団法人 自動車リサイクル促進センター(PDF)
長期修繕計画作成ガイドライン|国土交通省(PDF) 
マンション大規模修繕工事に関する実態調査|国土交通省(PDF)
設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)|国土交通省(PDF)
利益相反行為|コトバンク